フェイク鈴虫

過去の話、今ぐらいの季節の頃だ。
仕事場によくバッタや、コウロギなどがうろついていた。
周りが田んぼなので、まあよくある事と、捕まえては追い出していた。
ふと、茶色いモノがうろついているのが見えた。
…ゴキ?と思ったが棚の下に入り、見失った。
数分後すぐ近くの棚に例の茶色いモノが入っていくのが見えたが…ゴキでは無いようだ。

取りあえず、別の人に虫の事を伝え、捕獲して追い出す事になった。
下から覗くと、それはどうやら鈴虫のようだった。
棚を動かし、鈴虫を手に取ろうとした時…

「あっ、ごめん…見間違い…ゴキブリだ…」
…この台詞が出るまで、鈴虫に見えていたモノが、瞬時に脳はゴキブリと判断した。
羽が出ていた為、あやふやなモノだった虫。
しかし、ゴキブリと認識したら何者でもない、見間違う事無くゴキブリ。

人間の判断とはこんなものである。